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平成の沢村賞候補者を振り返る

 今回は、先日発表になった沢村賞についての記事です。19年ぶりに「該当者なし」となったことで話題になりましたよね(⇒沢村賞、19年ぶり該当者なし…堀内恒夫委員長「賞のレベルをこれ以上、下げたくない」)。そこで、その決定の背景にある思惑を平成の沢村賞候補者を振り返ることで探りたいと思います。少し長いですが、暇つぶしにでもどうぞ。

*この記事は、私がおーぷん2ちゃんねるに立てたスレッド(平成の沢村賞候補者を振り返る【19年ぶり該当者なし】)の修正版です。

 

1. 沢村賞とは ~沢村栄治の功績~

沢村栄治賞、通称「沢村賞」とは、プロ野球創生期に豪速球投手として活躍し、1944年に戦死した沢村栄治投手の栄誉と功績をたたえ、1947年に創設されたNPBの個人タイトルです。以下の7項目の選考基準があり、該当項目の多い先発投手の中から選考委員会が毎年原則1名を選出します。

登板数 25試合以上
完投数 10試合以上
勝利数 15勝以上
勝 率 6割以上
投球回 200イニング以上
奪三振 150個以上
防御率 2.50以下

これは、黎明期の読売ジャイアンツに所属した沢村投手が、先発した試合では必ず完投する「先発完投型」の投手であったことから考えられた基準であり、2019年の現在まで脈々と引き継がれています。

沢村投手の成績としては1937年春季のものが代表的です。このシーズンの沢村投手は30登板、24先発、24完投7完封24勝4敗、勝率.857、244.0投球回、196奪三振防御率0.81をマークし、最多勝最高勝率最多奪三振最優秀防御率、そして最多完封投手5冠を史上初めて達成しています。これが約3ヶ月半の期間で達成された数字であることを考えると、如何に当時傑出した存在であったかが分かりますよね。

 

2. 沢村賞をポイント化する

本題に入る前に、沢村賞候補者の成績を分かりやすく比較するため、これまでの選考結果をもとに私が作ってみた沢村賞ポイント(以下spt)について説明します。sptの計算式は以下のようになっています。

spt=(先発試合-25)+(完投率%-30)+(勝利-15)×20+(勝率%-60)+(投球回-150)×3+(奪三振-150)×0.5+(60-自責点)×4+(項目達成数)×30+(タイトル数)×10

これは簡単に言うと、沢村賞の選考基準をどれくらい上回ったかという指標なのですが、以下にこの指標を作った際に留意した点を箇条書きで書いておきます。

◯勝利、投球回、奪三振、自責点の係数は基本的に勝ち星、防御率重視、奪三振の多さ自体は軽視されがちという選考結果から設定しています

◯自責点から60を引いているのは、200投球回以上投げて防御率2.50以下になるのは自責点60くらいだからです(正確には55.5・・・だが、キリの良い値にしている)

◯完投率%は完投数/先発数×100で、21世紀の沢村賞受賞者の平均が約30%だったことから30を引いています

◯投球回の選考基準は200投球回ですが、それだと最近の殆どの選手がマイナスとなってしまうため、基準を150に緩和しています

項目は沢村賞の7項目、タイトルは投手5冠の5タイトルを指し、候補者が複数人の場合は項目達成数>タイトル数の順に考慮される傾向があることから係数を決定しています

私個人の感覚で作ったもので大雑把な指標ですが、歴史を振り返る上での比較はできるくらいのものにはなるように雀の涙ばかりの努力はしました。尚、式を見れば分かるかもしれませんが、この指標は前回説明した小松式ドネーション(KD)の影響を多分に受けています(KDについては以下の記事参照)。

baseball-datajumble.hatenablog.com

sptを利用した候補者比較の具体例を一つ挙げます。1981年は紆余曲折を経て投手5冠の江川卓氏を抑え、西本聖氏が初めて受賞したのですが、sptを見ると

江川卓(巨)①* 30試 20勝6敗 .769 240.1回 221K 2.28 61責 20完投 66.7% 全7項目 5冠 721spt

(5)+(36.7)+(100)+(16.9)+(271)+(35.5)+(-4)+(210)+(50)=721spt


西本聖(巨)① 34試 18勝12敗 .600 257.2回 126K 2.58 74責 14完投 41.2% 5項目 無冠 485spt←沢村賞

(9)+(11.2)+(60)+(0)+(323)+(-12)+(-56)+(150)+(0)=485spt

*表記の説明:選手名右の丸数字はチームの順位;試は先発試合の略、Kは奪三振の略、責は自責点の略;勝敗の右の率は勝率、奪三振の右は防御率、完投の右の百分率は完投率;太字はリーグトップ

(単純に成績だけを見ると)江川氏の方が沢村賞に相応しかったのではないか、という結果になります。

この年は同チーム所属同士の争いでしたが、沢村賞は1950年から1988年まではセ・リーグのみを対象にしていたため、昭和以前のパ・リーグの非受賞投手まで調べると、このような前例はまだまだあります。ですが、今回は比較的選考が公平になってきた平成以降の沢村賞に絞って見ていきたいと思います。

 

3. 平成の沢村賞候補者を振り返る

いよいよ本題です。さっそく1989年からの候補者をsptとともに振り返っていきたいと思います。候補者としては、基本的には項目達成数1位と次点、sptの1位と次点を選出しています。では1989年からどうぞ!

 

1989年 斎藤雅樹(初) 別所毅彦、杉下茂、金田正一、堀本律雄、小山正明、稲尾和久、米田哲也


斎藤雅(巨)① 30試 20勝7敗 .741 245.0回 182K 1.62 44責 21完投 70.0% 全7項目 3冠 764spt←沢村賞

阿波野(近)① 28試 19勝8敗 .704 235.2回 183K 2.71 71責 21完投 75.0% 6項目 3冠 578spt

西本聖(中)③ 30試 20勝6敗 .769 246.2回 96K 2.44 67責 15完投 50.0% 6項目 1冠 567spt 81年沢村賞

桑田真(巨)① 30試 17勝9敗 .654 249.0回 155K 2.60 72責 20完投 66.7% 6項目 無冠 519spt 87年沢村賞

西崎幸(日)⑤ 27試 16勝9敗 .640 208.0回 164K 3.55 82責 17完投 63.0% 6項目 無冠 332spt


セ最多勝、最優秀防御率、最多完封斎藤雅樹が全7項目達成、さらに日本一に貢献し初受賞
パ3冠の阿波野は受賞ならず

 

 

1990年 野茂英雄(初) 別所毅彦、杉下茂、堀本律雄、稲尾和久、米田哲也


斎藤雅(巨)① 27試 20勝5敗 .800 224.0回 146K 2.17 54責 19完投 70.4% 6項目 4冠 626spt 89年沢村賞

野茂英(近)③ 27試 18勝8敗 .692 235.0回 287K 2.91 76責 21完投 77.8% 6項目 4冠 599spt←沢村賞

渡辺久(西)① 29試 18勝10敗 .643 224.1回 172K 2.97 74責 16完投 55.2% 6項目 1冠 461spt


パ最多勝、最多奪三振、最優秀防御率、最高勝率ゴールデンルーキー野茂が初受賞
セ4冠の斎藤雅樹の2年連続受賞はならず

 

 

1991年 佐々岡真司(初) 別所毅彦、杉下茂、稲尾和久、米田哲也、堀内恒夫


佐々岡(広)① 31試 17勝9敗 .654 240.0回 213K 2.44 65責 13完投 41.9% 全7項目 2冠 575spt←沢村賞

野茂英(近)② 29試 17勝11敗 .607 242.1回 287K 3.05 82責 22完投 75.9% 6項目 3冠 558spt 90年沢村賞


セ最多勝、最優秀防御率を獲得しリーグ優勝に貢献した佐々岡が全7項目達成で初受賞 パ3冠の野茂は連続受賞ならず

 

 

1992年 石井丈裕(初) 別所毅彦、杉下茂、稲尾和久、堀内恒夫(欠席)、山田久志


野茂英(近)② 29試 18勝8敗 .692 216.2回 228K 2.66 64責 17完投 58.6% 6項目 3冠 535spt 90年沢村賞

斎藤雅(巨)② 25試 17勝6敗 .739 187.2回 148K 2.59 54責 12完投 48.0% 4項目 3冠 358spt 89年沢村賞

仲田幸(神)③ 30試 14勝12敗 .538 217.1回 194K 2.53 61責 13完投 43.3% 4項目 1冠 342spt

石井丈(西)① 19試 15勝3敗 .833 148.1回 123K 1.94 32責 8完投 42.1% 4項目 1冠 253spt←沢村賞

岡林洋(ヤ)① 23試 15勝10敗 .600 197.0回 131K 2.97 65責 12完投 52.2% 4項目 無冠 252spt


近鉄のストッパー・赤堀に及ばず最優秀防御率は受賞できなかったが、パ最高勝率を獲得し日本一に大きく貢献した石井丈裕が初受賞
パ3冠の野茂、セ3冠の斎藤雅樹は既に沢村賞投手のためか受賞ならず

 

 

1993年 今中慎二(初) 別所毅彦、杉下茂、稲尾和久、堀内恒夫、山田久志


今中慎(中)② 30試 17勝7敗 .708 249.0回 247K 2.20 61責 14完投 46.7% 全7項目 2冠 644spt←沢村賞

野田浩(オ)③ 26試 17勝5敗 .773 225.0回 209K 2.56 64責 17完投 65.4% 6項目 2冠 532spt

山本昌(中)② 24試 17勝5敗 .773 183.1回 132K 2.05 43責 10完投 41.7% 5項目 4冠 432spt


セ最多勝、最多奪三振、全7項目達成の今中が同4冠の山本昌広、パ2冠の野田を抑え初受賞

 

 

1994年 山本昌広(初) 別所毅彦、稲尾和久、土橋正幸、平松政次(欠席)、星野仙一


伊良部(ロ)⑤ 26試 15勝10敗 .600 207.1回 239K 3.04 70責 16完投 61.5% 6項目 2冠 409spt

山本昌(中)② 29試 19勝8敗 .704 214.0回 148K 3.49 83責 14完投 48.3% 5項目 1冠 342spt←沢村賞

桑田真(巨)① 27試 14勝11敗 .560 207.1回 185K 2.52 58責 10完投 37.0% 4項目 1冠 330spt 87年沢村賞

斎藤雅(巨)① 27試 14勝8敗 .636 206.1回 144K 2.53 58責 11完投 40.7% 4項目 1冠 313spt 89年沢村賞


二年連続セ最多勝の好成績をマークした山本昌広が初受賞
西武の中継ぎ新谷に最優秀防御率を取られ、惜しくもパ2冠に終わった伊良部は受賞ならず

 

 

1995年 斎藤雅樹(2) 別所毅彦、稲尾和久、土橋正幸、平松政次、星野仙一


斎藤雅(巨)③ 27試 18勝10敗 .643 213.0回 187K 2.70 64責 16完投 59.3% 6項目 3冠 497spt←沢村賞2回目

チェコ(広)② 27試 15勝8敗 .652 193.2回 166K 2.74 59責 10完投 37.0% 5項目 無冠 307spt


セ最多勝、最多奪三振、最多完封斎藤雅樹が二度目の受賞

 

 

1996年 斎藤雅樹(3) 別所毅彦、稲尾和久、土橋正幸、平松政次、藤田元司


斎藤雅(巨)① 25試 16勝4敗 .800 187.0回 158K 2.36 49責 8完投 32.0% 5項目 4冠 391spt←沢村賞3回目

西口文(西)③ 27試 16勝10敗 .615 210.1回 173K 3.17 74責 13完投 48.1% 6項目 無冠 358spt 

E.ヒルマン(ロ)⑤ 29試 14勝9敗 .609 213.1回 119K 2.40 57責 11完投 37.9% 5項目 無冠 329spt

ガルベス(巨)① 27試 16勝6敗 .727 203.2回 112K 3.05 69責 12完投 44.4% 5項目 1冠 315spt


セ最多勝、最優秀防御率、最高勝率、最多完封を獲得し、リーグ優勝に貢献した斎藤雅樹が二年連続三度目の受賞

 

 

1997年 西口文也(初) 別所毅彦、稲尾和久、土橋正幸、平松政次、藤田元司


西口文(西)① 26試 15勝5敗 .750 207.2回 192K 3.12 72責 10完投 38.5% 6項目 3冠 380spt←沢村賞

山本昌(中)⑥ 28試 18勝7敗 .720 206.2回 159K 2.92 67責 4完投 14.3% 5項目 2冠 376spt 94年沢村賞


パ最多勝、最多奪三振、最高勝率を獲得し、リーグ優勝に貢献した西口が初受賞
セ2冠の山本昌は受賞ならず

 

 

1998年 川崎憲次郎(初) 別所毅彦、稲尾和久、土橋正幸、平松政次(欠席)、藤田元司


川崎憲(ヤ)④ 28試 17勝10敗 .630 204.1回 94K 3.04 69責 9完投 32.1% 4項目 2冠 287spt←沢村賞

N.ミンチ-(広)⑤ 35試 15勝11敗 .577 236.0回 123K 2.75 72責 6完投 17.1% 3項目 無冠 281spt

野口茂(中)② 27試 14勝9敗 .609 192.0回 134K 2.34 50責 6完投 22.2% 3項目 1冠 233spt

石井一(ヤ)④ 27試 14勝6敗 .700 196.1回 241K 3.30 72責 6完投 22.2% 3項目 1冠 221spt


セ最多勝、最多完封川崎憲次郎が初受賞
最優秀防御率の野口茂樹、最多奪三振の石井一久は受賞ならず

 

 

1999年 上原浩治(初) 藤田元司(欠席)、稲尾和久(座長代理)、土橋正幸、平松政次、堀内恒夫


上原浩(巨)② 25試 20勝4敗 .833 197.2回 179K 2.33 49責 12完投 48.0% 6項目 4冠 563spt←沢村賞

野口茂(中)① 29試 19勝7敗 .731 203.2回 145K 2.65 60責 7完投 24.1% 4項目 無冠 370spt

黒木知(ロ)④ 29試 14勝10敗 .583 212.2回 171K 2.50 59責 7完投 24.1% 4項目 無冠 299spt

松坂大(西)② 24試 16勝5敗 .762 180.0回 151K 2.60 52責 6完投 25.0% 4項目 1冠 283spt

佐々岡(広)⑤ 26試 15勝8敗 .652 190.0回 150K 3.27 69責 13完投 50.0% 5項目 1冠 270spt 91年沢村賞 

工藤公(ダ)① 26試 11勝7敗 .611 196.1回 196K 2.38 52責 7完投 26.9% 4項目 3冠 263spt


ルーキーの上原浩治がセ4冠で堂々の初受賞
野口茂樹は無冠で受賞ならず

 

 

2000年 該当者なし 藤田元司、稲尾和久、土橋正幸、平松政次、堀内恒夫


バンチ(中)② 25試 14勝8敗 .636 184.0回 168K 2.98 61責 2完投 8.0% 3項目 1冠 169spt

石井一(ヤ)④ 27試 10勝9敗 .526 183.0回 210K 2.61 53責 3完投 11.1% 2項目 2冠 113spt

松坂大(西)② 24試 14勝7敗 .667 167.2回 144K 3.97 74責 6完投 25.0% 2項目 3冠 65spt

D.メイ(巨)① 24試 12勝7敗 .632 155.1回 165K 2.95 51責 3完投 12.5% 2項目 1冠 54spt

小野晋(ロ)⑤ 26試 13勝5敗 .722 167.0回 96K 3.45 64責 4完投 15.4% 2項目 1冠 37spt


4項目以上の達成者がおらず、受賞者なし

 

 

2001年 松坂大輔(初) 藤田元司、稲尾和久、土橋正幸、平松政次、堀内恒夫


松坂大(西)③ 32試 15勝15敗 .500 240.1回 214K 3.60 96責 12完投 37.5% 5項目 2冠 333spt←沢村賞

野口茂(中)⑤ 26試 12勝9敗 .571 193.2回 187K 2.46 53責 11完投 42.3% 4項目 3冠 278spt


ルーキーイヤーから3年連続最多勝平成の怪物・松坂が初受賞
セ3冠の野口茂樹はまたも受賞ならず

 

 

2002年 上原浩治(2) 藤田元司、稲尾和久、平松政次、土橋正幸、堀内恒夫


上原浩(巨)① 26先発 17勝5敗 .773 204.0回 182K 2.60 59責 8完投 30.8% 5項目 2冠 411spt←沢村賞2回目

井川慶(神)④ 29先発 14勝9敗 .609 209.2回 206K 2.49 58責 8完投 27.6% 5項目 2冠 367spt

Jパウエル(近)② 32先発 17勝10敗 .630 216.2回 182K 3.78 91責 5完投 15.6% 5項目 4冠 318spt


セ最多勝、最高勝率を獲得し、日本一に貢献した上原が二度目の受賞
セ2冠の井川、パ4冠のパウエルは受賞ならず

 

 

2003年 井川慶(初)&斉藤和巳(初) 藤田元司、稲尾和久、平松政次、土橋正幸、堀内恒夫


井川慶(神)① 29試 20勝5敗 .800 206.0回 179K 2.80 64責 8完投 27.6% 5項目 4冠 478spt←沢村賞

斉藤和(ダ)① 26試 20勝3敗 .870 194.0回 160K 2.83 61責 5完投 19.2% 4項目 3冠 400spt←沢村賞

上原浩(巨)③ 27試 16勝5敗 .762 207.1回 194K 3.17 73責 11完投 40.7% 6項目 1冠 381spt 99、02年沢村賞

松坂大(西)② 27試 16勝7敗 .696 194.0回 215K 2.83 61責 8完投 29.6% 4項目 3冠 342spt 01年沢村賞


セ4冠の井川、パ3冠の斉藤和巳が同時に20勝、エースとしてリーグ優勝に貢献し初のダブル受賞
松坂は3冠、上原は6項目達成も受賞ならず

 

 

2004年 川上憲伸(初) 藤田元司、稲尾和久、平松政次、土橋正幸、堀内恒夫


川上憲(中)① 27試 17勝7敗 .708 192.1回 176K 3.32 71責 5完投 18.5% 4項目 1冠 267spt←沢村賞

井川慶(神)④ 29試 14勝11敗 .560 200.1回 228K 3.73 83責 6完投 20.7% 3項目 2冠 179spt 03年沢村賞


セ最多勝を獲得し、リーグ優勝に貢献した川上憲伸が初受賞
同2冠の井川は連続受賞ならず

 

 

2005年 杉内俊哉(初) 藤田元司、稲尾和久、土橋正幸、平松政次、斎藤雅樹


杉内俊(ソ)② 26試 18勝4敗 .818 196.2回 218K 2.11 46責 8完投 30.8% 5項目 2冠 484spt←沢村賞

松坂大(西)③ 28試 14勝13敗 .519 215.0回 226K 2.30 55責 15完投 53.6% 5項目 2冠 421spt 01年沢村賞

三浦大(横)③ 28試 12勝9敗 .571 214.2回 177K 2.52 60責 10完投 35.7% 4項目 3冠 303spt

黒田博(広)⑥ 28試 15勝12敗 .556 212.2回 165K 3.17 75責 11完投 39.2% 5項目 1冠 303spt


杉内が松坂との同世代一騎打ちを制し初受賞
セ3冠の三浦は受賞ならず

 

 

2006年 斉藤和巳(2) 稲尾和久、土橋正幸、平松政次、斎藤雅樹(欠席)


斉藤和(ソ)③ 26試 18勝5敗 .783 201.0回 205K 1.75 39責 8完投 30.8% 6項目 5冠 575spt←沢村賞2回目

松坂大(西)② 25試 17勝5敗 .773 186.1回 200K 2.13 44責 13完投 52.0% 6項目 無冠 457spt 01年沢村賞

川上憲(中)① 28試 17勝7敗 .708 215.0回 194K 2.51 60責 6完投 21.4% 5項目 4冠 452spt 04年沢村賞


斉藤和巳が松坂とのデッドヒートを制し、1981年江川卓以来の投手5冠で二度目の受賞
セ4冠の川上は二度目の受賞ならず

 

 

2007年 ダルビッシュ有(初) 土橋正幸、稲尾和久(欠席)、平松政次、堀内恒夫、大野豊


ダルビ(日)① 26試 15勝5敗 .750 207.2回 210K 1.82 42責 12完投 46.2% 全7項目 1冠 527spt←沢村賞

涌井秀(西)⑤ 28試 17勝10敗 .630 213.0回 141K 2.79 66責 11完投 39.3% 5項目 1冠 376spt

杉内俊(ソ)③ 28試 15勝6敗 .714 197.2回 187K 2.46 54責 5完投 17.9% 5項目 無冠 338spt 05年沢村賞

成瀬善(ロ)② 24試 16勝1敗 .941 173.1回 138K 1.82 35責 6完投 25.0% 3項目 3冠 332spt

グライ(ヤ)⑥ 30試 16勝8敗 .667 209.0回 159K 2.84 66責 3完投 10.0% 5項目 1冠 329spt


パ最多奪三振を獲得し、リーグ優勝に貢献した3年目のダルビッシュが全7項目達成で初受賞
パ3冠の成瀬は受賞を逃した

 

 

2008年 岩隈久志(初) 土橋正幸、平松政次、堀内恒夫、大野豊、村田兆治


岩隈久(楽)⑤ 28試 21勝4敗 .840 201.2回 159K 1.87 42責 5完投 17.9% 6項目 3冠 576spt←沢村賞

ダルビ(日)③ 24試 16勝4敗 .800 200.2回 208K 1.88 42責 10完投 41.7% 全7項目 無冠 514spt 07年沢村賞


パ3冠、23年ぶり20勝超えの楽天・岩隈2年連続全7項目達成のダルビッシュを抑え初受賞

 

 

2009年 涌井秀章(初) 土橋正幸、平松政次、堀内恒夫、大野豊、村田兆治


涌井秀(西)④ 27試 16勝6敗 .727 211.2回 199K 2.30 54責 11完投 40.7% 全7項目 2冠 509spt←沢村賞

杉内俊(ソ)③ 26試 15勝5敗 .750 191.0回 204K 2.36 50責 6完投 23.1% 5項目 2冠 369spt 05年沢村賞

ダルビ(日)① 23試 15勝5敗 .750 182.0回 167K 1.73 35責 8完投 34.8% 4項目 2冠 362spt 07年沢村賞

吉見一(中)② 25試 16勝7敗 .696 189.1回 147K 2.00 42責 5完投 20.0% 4項目 2冠 348spt

田中将(楽)② 24試 15勝6敗 .714 189.2回 171K 2.33 49責 6完投 25.0% 5項目 無冠 329spt


パ最多勝、最多完封の涌井が最多奪三振の杉内、最優秀防御率の同世代ダルビッシュらを抑え全7項目達成で初受賞

 

 

2010年 前田健太(初) 土橋正幸(欠席)、平松政次、堀内恒夫(座長代理)、村田兆治、北別府学


前田健(広)⑤ 28試 15勝8敗 .652 215.2回 174K 2.21 53責 6完投 21.4% 6項目 3冠 447spt←沢村賞

ダルビ(日)④ 25試 12勝8敗 .600 202.0回 222K 1.78 40責 10完投 40.0% 6項目 2冠 422spt 07年沢村賞 


セ3冠の前田健太パ2冠のダルビッシュを抑え、初受賞

 

 

2011年 田中将大(初) 土橋正幸、平松政次、堀内恒夫、村田兆治、北別府学


田中将(楽)⑤ 27試 19勝5敗 .792 226.2回 241K 1.27 32責 14完投 51.9% 全7項目 4冠 760spt←沢村賞

ダルビ(日)② 28試 18勝6敗 .750 232.0回 276K 1.44 37責 10完投 35.7% 全7項目 2冠 715spt 07年沢村賞


突如ボールが飛びにくくなった中、田中将大が平成最高の対決を制し初受賞
ダルビッシュは4年連続で好勝負を繰り広げ、メジャーへ旅立った

 

 

2012年 攝津正(初) 土橋正幸、平松政次、堀内恒夫、村田兆治、北別府学


前田健(広)④ 29試 14勝7敗 .667 206.1回 171K 1.53 35責 5完投 17.2% 5項目 2冠 427spt 10年沢村賞

攝津正(ソ)③ 27試 17勝5敗 .773 193.1回 153K 1.91 41責 3完投 11.1% 5項目 2冠 418spt←沢村賞


パ最多勝、最高勝率の攝津が初受賞
セ2冠の前田健太は勝ち星不足が響いたか

 

 

2013年 田中将大(2) 堀内恒夫(欠席)、平松政次(座長代理)、村田兆治、北別府学、工藤公康


田中将(楽)① 27試 24勝0敗 1.000 212.0回 183K 1.27 30責 8完投 29.6% 6項目 3冠 754spt←沢村賞2回目

金子千(オ)⑤ 29試 15勝8敗 .652 223.1回 200K 2.01 50責 10完投 34.5% 全7項目 2冠 529spt


前人未到の24勝0敗をマークし、楽天を球団初の日本一に導いた田中将大が二度目の受賞
全7項目達成の金子千尋は大記録を前に天を仰いだ

 

 

2014年 金子千尋(初) 堀内恒夫、平松政次、村田兆治、北別府学(欠席)、工藤公康


金子千(オ)② 26試 16勝5敗 .762 191.0回 199K 1.98 42責 4完投 15.4% 5項目 2冠 412spt←沢村賞

則本昂(楽)⑥ 28試 14勝10敗 .583 202.2回 204K 3.02 68責 9完投 32.1% 3項目 2冠 246spt

メッセ(神)② 31試 13勝10敗 .565 208.1回 226K 3.20 74責 3完投 9.7% 3項目 3冠 219spt


前年苦汁をなめた金子千尋が2年連続の好成績で初受賞
パ2冠の則本、セ3冠のメッセンジャーは受賞ならず

 

 

2015年 前田健太(2) 堀内恒夫、平松政次、村田兆治(欠席)、北別府学、山田久志


前田健(広)④ 29試 15勝8敗 .652 206.1回 175K 2.09 48責 5完投 17.2% 6項目 1冠 416spt←沢村賞2回目

藤浪晋(神)③ 28試 14勝7敗 .667 199.0回 221K 2.40 53責 7完投 25.0% 4項目 2冠 335spt

ジョンソン(広)④ 28試 14勝7敗 .667 194.1回 150K 1.85 40責 1完投 3.6% 4項目 1冠 306spt

大谷翔(日)② 22試 15勝5敗 .750 160.2回 196K 2.24 40責 5完投 22.7% 4項目 4冠 300spt


セ最多勝の前田健太が二度目の受賞
藤浪、ジョンソンは勝利数、イニングがわずかに足りず受賞ならず
投手専念しパ4冠の3年目・大谷翔平も登板数、イニング不足で受賞を逃した

 

 

2016年 クリス・ジョンソン(初) 堀内恒夫、平松政次、村田兆治、北別府学、山田久志


ジョンソン(広)① 26試 15勝7敗 .682 180.1回 141K 2.15 43責 3完投 11.5% 4項目 無冠 265spt←沢村賞

菅野智(巨)② 26試 *9勝6敗 .600 183.1回 189K 2.01 41責 5完投 19.2% 4項目 2冠 206spt


タイトルは獲得できなかったものの、勝利数で他の候補を凌駕し広島の25年ぶりリーグ優勝に大きく貢献したジョンソンが初受賞
1964年の阪神、ジーン・バッキー以来二度目の外国人での沢村賞受賞となった
菅野は味方の援護が無かった

 

 

2017年 菅野智之(初) 堀内恒夫、平松政次、村田兆治、北別府学、山田久志


菅野智(巨)④ 25試 17勝5敗 .773 187.1回 171K 1.59 33責 6完投 24.0% 5項目 3冠 462spt←沢村賞

菊池雄(西)② 26試 16勝6敗 .727 187.2回 217K 1.97 41責 6完投 23.1% 5項目 3冠 429spt


無援護ならもっと抑えればいいと悟った菅野がセ3冠で初受賞
パ3冠の菊池雄星は惜しくも受賞ならず

 

 

2018年 菅野智之(2) 堀内恒夫、平松政次、村田兆治、北別府学、山田久志


菅野智(巨)③ 27試 15勝8敗 .652 202.0回 200K 2.14 48責 10完投 37.0% 全7項目 4冠 493spt←沢村賞2回目

大瀬良(広)① 27試 15勝7敗 .682 182.0回 159K 2.62 53責 2完投 7.4% 4項目 2冠 256spt


菅野がセ4冠、全7項目達成で文句無しの二年連続受賞

 

 

4. 今年の選考結果について

今年の選考結果について探る前に、前項の結果をまとめます。sptの順位によって平成の沢村賞候補者の選考結果をまとめると、以下の4パターンがあることが分かります。

パターン1:spt1位が受賞(03のみ上位2名)

⇒89斎藤雅、91佐々岡、93今中、95斎藤雅、96斎藤雅、97西口、98川崎、99上原、01松坂、02上原、03井川&斉藤和、04川上

 05杉内、06斉藤和、07ダル、08岩隈、09涌井、10前田、11田中、13田中、14金子、15前田、16KJ、17菅野、18菅野


パターン2:spt1位が沢村賞受賞者のため次点が受賞

⇒90野茂(sptトップ斎藤雅)、12攝津(sptトップ前田)


パターン3:spt1位でも項目数トップでもない

⇒92石井丈(spt&項目数トップ野茂)、94山本昌(spt&項目数トップ伊良部)


パターン4:該当者なし

00 項目数トップが3項目

 これを見ると、ほとんどの年がパターン1、2にあたることから、平成の沢村賞はある程度成績をきちんと見て決められていることが分かります。パターン2の例があることから、沢村賞既受賞者の受賞のハードルの高さも分かると思います。その一方で、パターン3の例の異質さが際立ちます。前項の解説の通り、こういう年には日本一、優勝争い、2年連続の好成績などなど明確な理由があるのですが、やや選考にブレがあることは否めません。特に1992年の場合は、沢村賞投手であることを鑑みても野茂投手に分があったように私は思います。とはいえ、選考委員の方々は平成になってからは大方妥当な判断をされていることが分かりました

 次に、平成の沢村賞受賞者の項目数を見てみます。

7項目 89斎藤雅 91佐々岡、93今中、07ダル、09涌井、11田中、18菅野
6項目 90野茂、95斎藤雅、97西口、99上原、06斉藤和、08岩隈、10前田、13田中、15前田
5項目 94山本昌、96斎藤雅、01松坂、02上原、03井川、05杉内、12攝津、14金子、17菅野
4項目 92石井丈、98川崎、03斉藤和、04川上、16KJ

唯一の該当者なしの年だった2000年は3項目が最高であったことから、4項目以上達成していることは最低条件のようです。

以上をもとに、令和初の沢村賞投手が誕生するはずだった今年の沢村賞について見ていきましょう。今年4項目以上を達成した投手は巨人の山口投手、日本ハムの有原投手だけですが、一応3項目を達成した投手(ソフトバンク千賀投手、DeNA今永投手、オリックス山岡投手)も合わせてsptを見ていきます。

山口俊(巨)① 26試 15勝4敗 .789 170.0回 188K 2.91 55責 0完投 *0.0% 4項目 3冠

(1)+(-30)+(0)+(18.9)+(60)+(19)+(20)+(120)+(30)=239spt


有原航(日)⑤ 24試 15勝8敗 .652 164.1回 161K 2.46 45責 1完投 *4.2% 4項目 1冠

(-1)+(-25.8)+(0)+(5.2)+(43)+(5.5)+(60)+(120)+(10)=217spt


千賀滉(ソ)② 26試 13勝8敗 .619 180.1回 227K 2.79 56責 2完投 *7.7% 3項目 2冠

(1)+(-22.3)+(-40)+(1.9)+(91)+(38.5)+(16)+(90)+(20)=196spt


今永昇(De)② 25試 13勝7敗 .650 170.0回 186K 2.91 55責 3完投 12.0% 3項目 1冠

(0)+(-18.0)+(-40)+(5.0)+(60)+(18)+(20)+(90)+(10)=145spt


山岡泰(オ)⑥ 26試 13勝4敗 .765 170.0回 154K 3.71 70責 2完投 7.7% 3項目 1冠

(1)+(-22.3)+(-40)+(16.5)+(60)+(2)+(-40)+(90)+(10)=77spt

このように、今年の沢村賞候補者のsptはこれまでの候補者の中でも低い方であることが分かります。3項目達成の3選手は、勝ち星、防御率重視の沢村賞で、これらの項目でマイナスとなっているのが致命的です。議論に上がるのは、やはり4項目達成の山口投手と有原投手になりますが、分業化が加速する現代野球に見合っていないと言われている完投数を無視するとしても、イニングが少なすぎます。2016年のジョンソン投手のようにQS率が高かったり(92.3%)、1992年の石井丈裕投手のようにイニングが少なくても完投率が高く、日本一に貢献したという大義名分もありません。これでは該当者なしという結果になってもやむを得ません。今回も妥当な選考結果だったということが言えると思います。

しかし、今年の候補者たちは全体的なレベルが上がり、分業化が加速する現代野球の中で彼らなりに結果を残しているのも事実です。実際、今季最も多いイニングを投げた千賀投手は、彼にしては長いイニングを投げ続けてもういっぱいいっぱいに見えましたし、現在のレベルが高いプロ野球界では先発投手は6イニングを如何に抑えて後ろの良い投手に繋ぐかということの方が重要になっているのかもしれません。ただ、今までのNPBで先発完投型の投手がメジャーでも結果を残しているだけに、そのような投手が絶滅危機にあるのは少々寂しくもあります。完投数の低下に伴い、沢村賞投手の選考基準を緩和すべきだという意見もありますが、個人的にはチームが困った時に圧巻の投球でイニングを食ってくれるエース投手が好きなので、そのような投手が将来出てきたときのために今の基準のタイトルはこれからも残していくべきだと思います。とりあえず来年に期待しましょう!

 

5. 歴代受賞者のリーグ平均防御率補正spt

最後は、ついでに調べた歴代沢村賞受賞者のsptをリーグ平均防御率で補正した場合のランキングです。リーグ平均防御率補正spt(以下lspt)は以下の式から成ります。sptとの違いは自責点の項だけで、リーグ平均防御率の投手が200投球回投げたときの自責点から投手の自責点を引くという式になっています。

リーグ平均防御率補正spt(lspt)=spt+(リーグ平均防御率×200/9-60)×4

これにより、年単位で難易度の大きく異なる自責点のノルマがリーグ平均防御率を反映したものになり、年代ごとの比較が可能になります。1989年以降の受賞者のlsptは以下のようになります(lspt次点が500を超える場合は次点も明記)。

89斎藤雅 841 次点阿波野715
13田中将 832 次点金子千607
11田中将 783 次点ダルビ738
90野茂英 737 次点斎藤雅733
93今中慎 723 次点野田浩610
99上原浩 690
08岩隈久 684 次点ダルビ621
91佐々岡 669 次点野茂英664
06斉藤和 656 次点川上憲539
09涌井秀 627

18菅野智 618
03井川慶 609
07ダルビ 606
05杉内俊 606 次点松坂大544
95斎藤雅 605
10前田健 574 次点ダルビ534
03斉藤和 574
17菅野智 549 次点菊池雄515
96斎藤雅 513
14金子千 493

02上原浩 490
97西口文 485
01松坂大 482
15前田健 465
12攝津正 447
94山本昌 432 トップ伊良部542
04川上憲 418
98川崎憲 373
92石井丈 360 トップ野茂642
16ジョンソン 353
19山口俊 346 該当者なし
00バンチ 276 該当者なし

lsptでは2013年の田中将大が、統一球だった2011年より上になります。また4項のパターン2の例もリーグによって平均防御率が違うため、受賞者(90年は野茂、12年は攝津)が上位になりsptの問題点が多少改善されています。斎藤雅樹、野茂、ダルビッシュの傑出度の高さも目に見えて分かります。次に、昭和も合わせた歴代受賞者のlsptの各選手のキャリアハイは以下のようになります(試合数は所属チームの試合数)。

1549 61権藤 博(中日)130試合
1505 54杉下 茂(中日)130試合
1333 50真田重男(松竹)137試合
1300 58金田正一(国鉄)130試合
1195 64バッキー(阪神)140試合
1183 62小山正明(阪神)133試合
1157 60堀本律雄(巨人)130試合
1141 68江夏 豊(阪神)133試合
1027 53大友 工(巨人)125試合
*996 66村山 実(阪神)135試合

sptは前回の小松式ドネーションの式を一部参考にして作ったため、300投球回を超えて投げることが多かった昭和の投手には1000lsptを超える受賞者がゴロゴロいます。パ・リーグの沢村賞非受賞者も、私が適当に調べた中では1961年稲尾和久(1704lspt,140試合)、1959年杉浦忠(1572lspt,134試合)、1978年鈴木啓示(1028lspt,130試合)らは1000を超えています。これらの投手は沢村賞に値する名投手ですね。

最後に、最初に戻って沢村賞の元となった1937年春季の沢村栄治投手の成績をlsptで見てみます。このシーズン、史上4人しか達成していない7項目5冠を達成した沢村投手は56試合制で992sptを記録しています。このシーズンのリーグ平均防御率のデータは見つからなかったので、規定到達者の平均防御率(2.67でした)からおよそのlsptを算出すると、989lsptになります。sptより低くなり、戦前はかなりの投高打低だったことが分かります。ただ、この数字が現在のシーズンの半分強の期間で叩き出されたことを忘れてはいけません。事実、今のシーズンと同じくらいの長さになる1937年春季と秋季の合算値では104試合制で1514lsptを記録しており、歴代の沢村賞受賞者と遜色ない成績を残した「大投手」であったことが分かります。生きて、野球を続けている姿が見たかったですね・・・。ちなみに、沢村投手と同じ時代を生きた旭川の豪腕、ヴィクトル・スタルヒン投手は、シーズン42勝の日本記録を樹立した1939年に1718lsptを記録しており、これが歴代最高記録と思われます。彼もまた、激動の野球人生を送ったわけですが、それは別の機会にしましょう。

 

6. 終わりに

この記事で、沢村賞への理解が深まったなら嬉しいです。ただsptについては、候補者の成績を比べやすくするために私が作ったネタ指標でしかないので、受賞者を予想する際には実際の成績・プレーを見ることを忘れないでください。次回はまだ決めていませんが、こんな感じでまた面白いデータをまとめたいと思います。今年のプロ野球もあと数試合。令和の野球がどう変化していくかに注目ですね。

 

7. 参考サイト

歴代沢村賞

日本プロ野球記録

セパ年度別 打低打高早見表[1950-2019]