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2020年戦力分析その5 ~北海道日本ハムファイターズ~

0. はじめに

 楽天が前オリックスのロメロ選手を獲得しましたね!これでパ・リーグではソフトバンクと並んで主力外国人野手が3人となり、リーグトップの打線も夢ではなくなってきました(ロメロ選手を加えたオーダーも前記事に追記しています!)。一方、各球団の新外国人が次々に来日するなど、キャンプ入りも間近に迫ってきました。今年はどの選手がキャンプから紙面を賑わせてくれるのでしょうか。今回は戦力分析の5回目で、北海道日本ハムファイターズの記事になります。昨年話題となったショートスターターについてのデータもまとめてみたので、どうぞご一読を。

 

1. 2019年シーズンの総括

 昨年の北海道日本ハムファイターズは7月末までは首位ソフトバンクと0.5ゲーム差の2位につけていたものの、8月に20敗を喫したことで最終的には首位と13ゲーム差の5位に終わるという悔しいシーズンでした。では、その大失速の原因は何だったのか・・・投手陣から振り返っていきましょう。

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 先発陣の一試合あたりのイニング(先発IN/G)投球数(先発P/G)をを見ると、他球団とは全く違う異例のシーズンであったことが分かります。他球団の先発陣は5回以上、100球というのを目処に投げている感じですが、昨年の日本ハムの先発陣は有原投手と上沢投手以外は5回未満、100球未満に留まっています。これは先発投手を相手打線が2巡、3巡する前に降ろして次の投手に繋げるショートスターターを大々的に導入したことによるものなのですが、その実態はどうなっているのでしょうか。今回はショートスターターについて具体的に定義した上で、そのプラス面とマイナス面に迫ります。

 その前に、なぜ先発投手を早めに降ろすショートスターターという戦術を取るかということについて説明しなければなりません。その理由を端的に表せば、「主力打者と同じ投手の対戦回数を極力減らすため」ということにあると言っていいでしょう。良い打者ほど一試合のうちの対戦回数が増えるほど、良い結果を残す確率が高くなります。長打力のある打者の場合はそれほど得点に繋がるケースも増えていくでしょう。一方で投手の方は球数を放るほどパフォーマンスは落ちていきます。パフォーマンスが落ちたときに主力打者と当たるほど失点の確率は上がっていきます。先発投手は長いイニングを投げなければならない=同じ打者と数回対戦しなければならない・・・ショートスターターという戦術はこういった固定観念の裏をついた画期的な戦術なのです。

 では、ショートスターターという戦術を具体的に定義してみます。ショートスターターというのは打者が2巡あるいは3巡する前に先発投手を降板させて余計な失点を防ぐという戦術ですから、対戦打者は多くても18人になります。WHIPの平均が1.30くらいとされていることを考えると、イニング数は多くても5回未満というところでしょう。また失点数が多ければ多いほど勝つ確率は低くなるので、QS(6回以上を3自責点以下)の定義も併せて考えると、失点数は悪くても2失点以下というところでしょうか。以上を総合すると、5回未満を2失点以下かつ打者18人以下という条件が成立すればショートスターター成功ということができそうです。

 昨シーズンの日本ハムでこの条件に見合う内容を実際に遂行した先発投手を挙げると、加藤貴之投手、金子弌大投手、堀瑞輝投手、上原健太投手、浦野博司投手、村田透投手、杉浦稔大投手、吉川光夫投手、北浦竜次投手、ロドリゲス投手の実に10名に上ります。これら10名の投手が4月2日から9月27日のシーズン最終戦にかけてのべ24回、この戦術を成功しており、シーズンを通してショートスターターを念頭に置いたブルペン運用をしていたことが分かります。

 一方、成功があれば当然、失敗もあります。ショートスターターの失敗は普通の"炎上"との区別が難しいのですが、今回は上記の10投手が先発した試合で5回未満を3失点以上で降板した試合をショートスターター失敗とすることにします。

 これらの定義をもとに、ショートスターターを実行した試合を分析していきます。

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 上の表の"ゲーム差"は首位とのゲーム差を示しており、"SS"はショートスターターの略で、"SS間隔"はショートスターターとして先発した投手が平均中何日で登板したかを示しています。では、月別のデータから見ていきましょう。ショートスターターの実行回数("SS成功"と"SS失敗"の合計)を見ると、月を経るごとに実行回数を増やしていっていることが分かります。しかし成功率は伴っているとは言い難く、調子の良かった7月の成功率でも60%程度に留まっており、勝負の8月の成功率に至っては50%を割っています。5回未満を3失点以上して降板する"SS失敗"が多いほど当然勝率は下がってくるので、勝率も伴っていません。唯一勝率の高かった7月も"SS失敗"による敗戦が4つを数えており、ショートスターターという戦術がチームの好調に水を差していたようにも思えます。9月になって実行回数を減らしていますが、もっと早くショートスターターを減らす判断ができなかったのかと思ってしまうデータになっています。

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 次は、対戦相手別のデータを見ていきます。ショートスターターでの勝利数を見てみると、面白いことに昨シーズンの上位チームから勝ち星を挙げており、一定の効果を発揮していることが見て取れます。特に楽天に対しては成功率も高く、対戦する打線によっては一考の余地がある戦術と言えるかもしれません。しかしロッテ、オリックス、そしてセ・リーグの球団に対する勝率がかなり悪く、ショートスターター実行試合だけで実に16敗を喫しています。ショートスターターの試合は中継ぎ陣の枚数と体力も多く消費しますし、これらの無駄に負けた試合が無ければもっと終盤までAクラスを争っていたのではと思ってしまいます。

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  上の表で、"第二先発"はショートスターターの先発試合において先発が降板した後1イニングより多いイニングを投げたいわゆる「第二先発」的な役割を果たした回数を示しており、"平均打者数"はショートスターターとして先発した試合での平均対戦打者数を示しています。この選手別のデータを見ると、結構多くの投手がショートスターターという戦略に関わっていたことが分かります。チーム内でもショートスターターとしての準備方法などで色々な試行錯誤がなされていることを察することができますが、残念ながら現代の野球はショートスターターを評価するようにはできていません。ショートスターターの投手に勝利やホールドがつくことは決して無いので、年俸面では評価されていても目に見えにくい成果と闘う"心の疲労"も大きいように思います。また"第二先発"として投げることの多かった金子投手、ロドリゲス投手、西村投手は実際の登板数やイニング数に比べると疲労の程度が大きいことが予想されますし、その点も心配です。昨年のブルペン運用の是非は今季の成績を見てみないと分かりませんが、首脳陣には複数シーズンを見越した選手起用や心のケアをしてほしいですね。

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 ここまでショートスターターの負の側面が目立つデータを示してきましたが、降板する回の点差別のデータを見ると、良い側面もあることが分かります。降板する回の点差が同点以下の状況では勝率が低く、失策も多く味方の守備も心なしか硬いように見えるデータになっていますが、リードした状況では6勝1敗1分けと手堅い試合運びが出来ています。サンプルは少ないですが、この6勝のうち5試合がビジター試合であることから、味方が先制してくれている可能性の高いビジター試合ではショートスターターも一考の価値があると言えるのではないでしょうか。

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 ショートスターターの話はこれぐらいにしておくとして、いつもの他球団との相性の話に移ります。反省点は、得失点差に比べて貯金を稼がれてしまった楽天戦とソフトバンク戦でしょうか。この2チームからもう少し勝ちをもぎ取っていたら、CS争いをしていたかもしれませんね。昨年本塁打と打点を多く稼がれてしまった西武打線には今年も要注意です。また鈴木大地選手とロメロ選手が加わる楽天打線も昨年のように一筋縄ではいかないことが予想されます。こちらも要警戒ですね。

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 次に野手ですが、昨年の誤算は開幕前に有鉤骨を骨折した清宮選手の離脱と王柏融選手でしょう。ロッテへ移籍となったレアード選手の後釜として二人の活躍をある程度計算に入れていたでしょうから、清宮選手の怪我と不調、王柏融選手の決定力不足は相当痛かったはずです。

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 これまでと同様に得点貢献のグラフ(灰色の棒)を見ても、やはりレアード選手の穴が目立ちますね。打線全体を見ても、大田選手と渡邉諒選手以外はいまいち物足りない成績に終わってしまっています。とはいえ上位打線の安定度はリーグ随一のものがあるので、今季は中軸以降の奮起に期待したいですね。

 

2.2019-2020シーズンの選手の動き・新戦力分析

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  昨年のドラフトは一昨年から打って変わって即戦力重視となり、ドラフト1位・河野竜生投手、同2位・立野和明投手といった即戦力投手を多く指名しています。新人王を目指して頑張ってほしいですね。また補強ポイントだった三塁手としては、巨人を自由契約になっていたクリスチャン・ビヤヌエバ選手を獲得しています。ビヤヌエバ選手は昨年235打席で8本塁打と期待に応えることができませんでしたが、2018年にはパドレスで20本塁打を放った実績もあります。まだ20代と若いですし、パ・リーグの野球に早く順応してほしいですね。彼が計算できるなら、一気に優勝も見えてきます。そして、新外国人投手としてはドリュー・バーヘイゲン投手を獲得しました。どんな選手なのか、近年の成績を見てみましょう。

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 近年の成績を見るに、バーヘイゲン投手は3Aとメジャーリーグを行き来するような位置にある選手であり、一試合あたりの投球イニングからロングリリーフあるいは先発投手として起用されていることが分かります。このことから、おそらく昨年のロドリゲス投手と同様にショートスターターとしての起用が見込まれての獲得であると予想されます。近年の投球回数も少ないですし、昨年投げ過ぎた投手の疲労を軽減するような活躍に期待したいですね。

 

3. 2020年の戦力分析・オーダー予想

 最後に今年の主要な投手陣・野手陣のメンバーを確認しておきましょう。

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 まず先発陣ですが、昨シーズンを怪我で全休したマルティネス投手がどの程度やってくれるかが今年の最も鍵となるところでしょう。上沢投手の完全復帰は遅くなりそうですし、彼が有原投手とともに規定投球回を投げきってくれることが優勝への前提条件と言っても過言ではありません。しかしバーヘイゲン投手も獲得しましたし、マルティネス投手次第では今年もショートスターターという戦術に依存することになりそうです。個人的にはショートスターターでの成功率、勝率が悪いロドリゲス投手や加藤貴之投手は規定投球回を投げる力があると思っていますし、先発に専念させたほうが勝ちを拾えると思えるのですが、そこは日本ハムのフロントが昨シーズンの結果を受けてどう思っているかどうか次第ですね。救援陣については、ショートスターターの影響で昨年の合計登板数がNPB記録を更新したようですし、まずは昨年頑張った選手の負担を軽減するようなブルペン運用をしてほしいですね。特に堀投手はまだとても若いですし、実験的な戦術で無理をさせないようにしてほしいです。

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 予想オーダーは例によって3パターン考えてあります。まずは昨年の穴であった三塁手にビヤヌエバ選手が入り、一塁と指名打者を中田選手、清宮選手、王柏融選手で争うというのがパターンAとパターンBのオーダーです。ビヤヌエバ選手の真の実力が見えてくるまでは、おそらくこのようなオーダーで試合に臨むのではないでしょうか。従来の西川、大田、近藤、中田の上位打線もいいですが、個人的にはパターンBのような近藤選手の出塁力、大田選手の決定力を活かしたオーダーも試してほしいです。またビヤヌエバ選手が成績を上げることが出来なかった場合には、パターンCのようなオーダーも考えなければなりません。ただ毎試合近藤選手が三塁を守るわけにはいかないので、昨シーズンと同様、左翼手を近藤選手と王柏融選手が争うような形になっていくでしょう。王柏融選手は近藤選手と同世代ですし、良いところを吸収してできるだけ近藤選手の成績に近づいていってほしいですね。

 日本ハムの推進力は若い生え抜き戦力の力ですから、どのオーダーを取るにしても未だ一軍でブレイクできていない現有戦力の底上げが欠かせません。特に弱点となっている遊撃手と三塁手は狙い目のポジションなので、昨年多くの打席を与えられた石井一成選手、横尾選手、平沼選手を始め若手選手は必死になってレギュラーを取りに行ってほしいですね。彼らが台頭すればするほど、優勝が見えてきます。そして清宮選手は怪我の後遺症も心配ですが、まだ先は長いので焦らずにステップアップしていってほしいですね。小笠原コーチも加わった日本ハムの野手育成手腕にも注目です(2020/2/6追記)。

 

4. 終わりに

 ショートスターターのデータもあったので少し長くなりましたが、以上が今季の北海道日本ハムファイターズの戦力分析になります。昨年の結果を受けて、栗山監督ら首脳陣がどういう戦術を取るのか今から楽しみですね。栗山監督も9年目と終わりが近いですし、有終の美を飾るに相応しい采配を披露してほしいです。

 次回はオリックス・バファローズの記事になります。それではまた。

 

5. 参考サイト

NPB.jp 日本野球機構

プロ野球 - スポーツナビ

データで楽しむプロ野球

- nf3 - Baseball Data House Phase1.0 2019年度版

FanGraphs Baseball | Baseball Statistics and Analysis