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プロ野球16球団構想を考える ~日本全国球場行脚~ 第一回 九州・四国・中国地方編

 新型コロナウイルス対策のため、オープン戦全試合が無観客試合で行われていますね。応援に行こうと思っていた人達は残念でしょうが、こればっかりは仕方ありません。しかし、よりによって東京五輪とWBCを直近に控えたシーズンでこうなるとは本当に困ったものですね。正直このままではシーズン開幕の延期もやむを得ない状況になってきている気がしますし、興行的には大打撃ですが選手とスタッフ、そしてファンのことを考えて賢明な判断をしてほしいです。休日にうかうか外にも出られない状況が続いていますし、このブログでも読んで気を紛らわせてください。久しぶりの更新となる今回は、先日ソフトバンクの王会長が発言したことで話題になったプロ野球のエクスパンション(球団拡張)についての記事になります。どうぞご一読を。

 

1. プロ野球16球団構想について

 皆さんはプロ野球の16球団構想やエクスパンションについて考えたことがありますか?既存の球団以外の地域に本拠地を置く新球団はとても魅力的なので、地図帳を開いたりして一度は考えたことはあるのではないでしょうか。私もこういった類の妄想が好きで、小さい頃は仮想の球団の設定を考えたりしていました。日本地図を眺めると、沖縄や南九州、四国、京都、北陸あたりに球団を置きたくなりますよね。

 とはいえ、こういう空想は野球ファンだけのものだと思っていたのですが、先日のソフトバンク・王貞治球団会長のテレビ番組での発言によって球界関係者からも実際にそういう声が上がっていることが明らかになりました(⇒王さん「できるなら16球団」プロ野球拡張へ注目発言)。この記事をざっと読んでみるに、野球人口低下の抑制とCS制度の改善が王会長が16球団構想を推す理由のようです。確かにプロ選手として生活ができる受け皿が広がれば野球を続ける選手自体も増えるかもしれませんし、16球団になれば現在のような苦労してシーズン一位を取ったチームが損をする、ある意味歪とも取れるCS制度を設ける必要性も無くなるでしょう。

 しかし、球団を増やせばそれだけ運営母体が必要になってきますし、戦力格差の拡大も懸念されます。それにCSが無くなったら無くなったで消化試合が増える問題が再燃してきそうな気もします。そして、一番気になるのが本拠地をどこに置くかという問題です。将来のプロ野球参入を目指す球団が発足した沖縄や新潟、静岡などが有力候補として挙がることが多いですが、実際にこれらの都市がプロ野球の集客を見込めるかどうかについては私たちもいまいち良く知らず、曖昧なイメージで語られていることが多いのではないのでしょうか

 そこで本記事では、各地方各都市の既存球場へのアクセス・動員数などのデータをもとに、その球場がプロ野球の本拠地としてのポテンシャルがあるかどうかを現行球団とも比較して探っていきたいと思います。それでは全3回+α の日本全国球場行脚の旅へ、どうぞ!

 

2. 日本全国球場行脚ツアー(九州・四国・中国地方編)

 ここからは現在本拠地として機能している球場も含めて各球場のデータを見ていきます。本拠地球場以外の球場としては、直近5年でプロ野球公式戦の開催が比較的多い球場を主に選びました。

 データにある「最寄り駅からの徒歩時間」は最寄り駅出口から時速4kmで歩いた時に球場までかかる時間、「最寄り空港からの距離」は近辺の主要な空港からの距離、「近隣主要駅からのバス時間」は球場最寄りの主要駅からバスを利用した場合に球場に着くまでに(歩きも含めて)かかる時間をある場合に示しています。また、続いて「1h電車通勤圏内人口」、「30min車通勤圏内人口」というデータがありますが、これは各自治体の市役所や役場から徒歩30分以内で行ける最寄り駅から、それぞれ電車あるいはモノレールを利用して1時間以内でその球場へ行ける市区町村の総人口車を利用して30分以内で行ける市区町村の総人口を示しています。それぞれのデータはYahoo!の乗換案内とMapFan、GoogleMapを使って調べています。本記事のメインで扱う指標であり、正確性を追求してはいますが、100%の正確性は保証しておりませんので、あくまで球場を比較、議論するための目安程度と捉えてください。

 これらのデータと過去5年間の平均観客動員数をもとに、その球場の本拠地としてのポテンシャルがどのくらいあるかを概説していきます。球場名赤が現本拠地の球場黄色は特定球団の準本拠地ではあるが本拠地候補でもある球場緑がどの球団の管轄でもない地方球場になっています。球場名は2020年現在のもので、正式名称が別にある場合にはカッコ内に示しています。それではどうぞ!

 

◯本拠地候補球場1 沖縄セルラースタジアム那覇(那覇市営奥武山野球場)

所在地:那覇市 都市圏 : 那覇都市圏

開場:2010年 収容人数:約20,000人 グラウンド内野:クレー舗装 外野:天然芝

両翼:100m 中堅:122m 左右中間:119m フェアゾーン面積:10,607㎡ ファウルゾーン面積:3,231㎡

最寄り駅からの徒歩時間:7分(奥武山公園駅/ゆいレール)

最寄り空港からの距離:3.9km(那覇空港)

1h電車通勤圏内人口:43.4万(那覇市、浦添市)

30min車通勤圏内人口:68.5万(那覇市 浦添市 西原町 与那原町 南風原町 八重瀬町 糸満市 豊見城市)

公式戦試合数(2019年シーズンまで):18試合 過去5年平均観客動員数:14,433人(9試合)

沖縄のメイン球場現在の施設は1960年に沖縄県初の本格的な野球場として誕生した沖縄県立奥武山野球場を改築したもの。まだアメリカ領だった1961年に沖縄初のプロ野球公式戦として西鉄ライオンズvs東映フライヤーズ10回戦が開催されている。沖縄県の特徴は戦争と米軍統治のため既存の鉄道路線が廃線となっているため、鉄道による移動手段が乏しいこと。現在は、紆余曲折を経て2003年に開業したモノレール(ゆいレール)こそ存在しているものの、ビールなどが振る舞われる野球観戦で有力な鉄道網が発達しきっていないデメリットは大きいかもしれない。車に乗って30分で来れる範囲でも4市4町で70万人弱と調べた球場の中では少ない方の球場になる。それでも近年の公式戦開催試合での観客動員数は右肩上がりであり、野球熱が盛り上がってきている地域なので、琉球ブルーオーシャンズの動向も含めて今後追っていきたい。

 

◯本拠地候補球場2 平和リース球場(鹿児島県立鴨池野球場)

所在地:鹿児島市 都市圏 : 鹿児島都市圏

開場:1970年 収容人数:21,000人 グラウンド内野:クレー舗装 外野:天然芝

両翼:98m 中堅:122m 左右中間:115.2m フェアゾーン面積:10,155㎡ ファウルゾーン面積:2,769㎡

最寄り駅からの徒歩時間:14分(郡元駅/鹿児島市電)

最寄り空港からの距離:44.1km(鹿児島空港)

近隣主要駅からのバス時間:30分弱(鹿児島中央駅-市民文化ホール前/いわさき各社路線)

1h電車通勤圏内人口:59.5万(鹿児島市)

30min車通勤県内人口:64.2万(鹿児島市 日置市)

公式戦試合数(2019年シーズンまで):63試合 過去5年平均観客動員数:16,831人(8試合)

鹿児島市にある国際規格の野球場。1972年から2007年まではロッテが春季キャンプを実施していた。ロッテが石垣島へキャンプ地を移して以降はKBOのチームが度々キャンプを実施している。本拠地とする際の問題点は鹿児島市以外からの集客があまり見込めないところで、隣の姶良市からも電車で往復2時間以上かかってしまう。空港からやや遠いのも選手にとっては難点かもしれない。最寄り駅も鹿児島市電の駅で一度に多くの乗客は見込めないため、こう見ると沖縄セルラースタジアムと同程度のポテンシャルと言える。プロ野球の公式戦としては近年はソフトバンクや巨人、ヤクルト主催の試合が行われており、毎回15,000人程度以上の集客が見込める野球熱の高い地域

 

◯本拠地候補球場3 リブワーク藤崎台(藤崎台県営野球場)

所在地:熊本市 都市圏 : 熊本都市圏

開場:1960年 収容人数:24,000人 グラウンド内野:クレー舗装 外野:天然芝

両翼:99.1m 中堅:121.9m 左右中間:116.5m フェアゾーン面積:10,315㎡ ファウルゾーン面積:3,335㎡ フェンス:1.8m

最寄り駅からの徒歩時間:20分(花畑町駅/熊本市電)

最寄り空港からの距離:19.3km(阿蘇くまもと空港)

近隣主要駅からのバス時間:20分程度(熊本駅前-蔚山町/熊本都市バス)

1h電車通勤圏内人口:91.8万(熊本市 玉名市 長洲町 玉東町 宇土市 宇城市)

30min車通勤圏内人口:84.2万(熊本市 合志市 益城町 嘉島町)

公式戦試合数(2019シーズンまで):66試合 過去5年平均観客動員数:13,561人(6試合)

熊本城公園内にある野球場。完成当時から国際規格を満たしていた球場であり、これまでの66試合中66本塁打と本塁打がかなり出にくい球場である。その欠点を除けば電車・車ともに80万以上のファンが見込めるとても良い場所にある球場と言える。しかしその割に近年の観客動員では鹿児島、沖縄に負けてしまっているが、何が熊本の人々を野球から遠ざけているのだろうか・・・村上選手ら地元選手の活躍による今後の盛り上がりに期待したい。

 

◇本拠地1 福岡PayPayドーム(福岡ドーム)

所在地:福岡市 都市圏 : 福岡都市圏 使用球団 : 福岡ソフトバンクホークス

開場:1993年 収容人数:40,122人 グラウンド:ロングパイル人工芝

両翼:100m 中堅:122m 左右中間:109.9m フェアゾーン面積:9,669㎡ ファウルゾーン面積:2,282㎡ フェンス:4.2m 屋根の高さ:68m

最寄り駅からの徒歩時間:17分(唐人町駅/福岡市地下鉄空港線)

最寄り空港からの距離:10.6km(福岡空港)

近隣主要駅からのバス時間:30分強(博多バスターミナル-ヤフオクドーム前/西鉄バス)

1h電車通勤圏内人口:195.3万(福岡市 糸島市 春日市 大野城市 粕屋町)

30min車通勤圏内人口:242.1万(福岡市 糸島市 那珂川市 春日市 大野城市 太宰府市 筑紫野市 宇美町 志免町 須恵町 粕屋町 篠栗町 久山町 新宮町 古賀市)

公式戦試合数(2019シーズンまで):1829試合 ホークス主催試合過去5年平均観客動員数:36,401人(329試合)

今シーズンから"福岡PayPayドーム"に改名することで色々と話題になっている現ソフトバンク本拠地。竣工時は斬新だった開閉式の屋根はコスト面や環境面の影響か開かれることが少なく、半ばバブル期の遺物と化している最寄り駅から遠いとの評判が目立つが、確かに他の本拠地に比べるとやや遠い方である。同じくらい歩くマツダスタジアムのように道端にフォトスポットが用意されているわけでもなく、ヤクルト創業の地の石碑ぐらいしか見どころが無いのはどうにかすべきだろう(ただ次第に巨大な福岡ドームの全貌が見えてくるのはかなりのワクワク感がある)。一方、集客の面では電車・車ともに200万程度のファンが見込め、さすがの成長著しい150万都市といったところ。ダイエー末期には売却されたこのドームを買い戻し、近年のボールパーク化を後押しした孫正義オーナーが率いるソフトバンク本社の体制がどこまで続くか分からないが、3軍制を一般化し、新しい選手育成システムを確立した球界のリーダーとして今後も福岡で頑張ってもらいたい。

 

◯本拠地候補球場4 北九州市民球場

所在地:北九州市 都市圏 : 北九州都市圏

開場:1958年 収容人数:22,000人 グラウンド内野:クレー舗装 外野:天然芝

両翼:92m 中堅:119m 左右中間:113.6m フェアゾーン面積:9,780㎡ ファウルゾーン面積:3,088㎡ フェンス:5.2m

最寄り駅からの徒歩時間:11分(香春口三萩野駅/北九州モノレール小倉線)

最寄り空港からの距離:19.8km(北九州空港)

近隣主要駅からのバス時間:20分強(小倉駅バスセンター-北九州市民球場/西鉄バス)

1h電車通勤圏内人口:105.6万(北九州市 香春町 行橋市 苅田町)

30min車通勤圏内人口:100.8万(北九州市 水巻市 中間市)

公式戦試合数(2019シーズンまで):431試合 ホークス主催試合過去5年平均観客動員数:20,077人(8試合)

ソフトバンクの準本拠地。毎年1~2試合は必ず主催試合を行っている。古くは西鉄ライオンズの準本拠地で、1960年代中盤から1970年までは年30試合以上行った頃もあった。フェンスは高いが両翼が狭いためか、かなりの打高球場であり、ここ5年のソフトバンク主催で行った8試合で実に25本塁打が出ている。観客動員は安定して20,000人を超える試合が続いており、本拠地候補としてのポテンシャルは非常に高い。人口減が叫ばれて久しい北九州市だが、野球でテコ入れをするのはアリかもしれない。

 

◯本拠地候補球場5 坊っちゃんスタジアム(松山中央公園野球場)

所在地:松山市 都市圏 : 松山都市圏

開場:2000年 収容人数:30,000人 グラウンド内野:クレー舗装 外野:天然芝

両翼:99.1m 中堅:122m 左右中間:117m フェアゾーン面積:10,305㎡ ファウルゾーン面積:3,984㎡ フェンス:4.9m

最寄り駅からの徒歩時間:降りてすぐ(市坪駅/JR予讃線)

最寄り空港からの距離:5.6km(松山空港)

1h電車通勤圏内人口:57.4万(松山市 松前町 伊予市)

30min車通勤圏内人口:62.9万(松山市 松前町 伊予市 砥部町 東金市)

公式戦試合数(2019シーズンまで):51試合 過去5年平均観客動員数:16,929人(8試合)

松山中央公園にある四国で唯一3万人の収容能力がある野球場。ヤクルトが秋季キャンプ地として使用しているほか、四国アイランドリーグplusの愛媛マンダリンパイレーツが本拠地としている。本拠地としてのポテンシャルは、電車・車で来れる都市の人口を見る限り鹿児島と同格といったところ。地図で見れば近そうに見える香川県、徳島県、高知県はもちろん松山市の隣の今治市からも電車で往復4時間、車で往復2時間と遠いため、なかなか継続的に客を呼んでいくのは厳しいと思われる。しかし、この伊予の地で3万人のスタンドが埋まるような光景がプロ野球で見られれば、あの野球好きの俳人も草葉の陰で泣いてしまうに違いない。いや、泣かせてあげよう、ヤクルトよ。

 

◇本拠地2 MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島(広島市民球場)

所在地:広島市 都市圏 : 広島都市圏 使用球団 : 広島東洋カープ

開場:2009年 収容人数:33,000人 グラウンド:天然芝

左翼:101m 右翼:100m 中堅:122m 左右中間:116m フェアゾーン面積:10,222㎡ ファウルゾーン面積:2,396㎡ フェンス:左翼3.6~中堅2.5~右翼3.4m

最寄り駅からの徒歩時間:13分(JR広島駅)

最寄り空港からの距離:48.0km(広島空港)

1h電車通勤圏内人口:184.9万(広島市 廿日市市 大竹市 府中町 坂町 海田町 呉市 東広島市)

30min車通勤圏内人口:153.3万(広島市 府中町 坂町 海田町 熊野町 呉市)

公式戦試合数(2019シーズンまで):756試合 カープ主催試合過去5年平均観客動員数:31,034人(346試合)

カープが2009年から使用しているメジャー風の新市民球場。山陽新幹線から球場内部まで俯瞰することができるので、広島以西の人は野球に興味が無くても見たことはあるという人が多いのではないだろうか。コロナが流行っている中でも抽選券を求めて来たファンが大量に居たあたり、カープフィーバーはまだまだ続きそうである。ほんの6年前までは1試合の観客動員が2万人を切ることもあったが、ここ2年は全試合が3万人超えとどんどんチケットが手に入りにくくなっている。やはり勝つことは最大のファンサービスと言える。昨年は4位だったが新規ファンのモチベーションを維持するためにも戦力を整え、持続的な人気が今後も維持されていくと野球ファンとしては嬉しい。

 

◯本拠地候補球場6 マスカットスタジアム(岡山県倉敷スポーツ公園野球場)

所在地:倉敷市 都市圏 : 倉敷・岡山都市圏

開場:1995年 収容人数:30,494人 グラウンド内野:クレー舗装 外野:天然芝

両翼:99.5m 中堅:122m 左右中間:116.1m フェアゾーン面積:10,286㎡ ファウルゾーン面積:4,088㎡

最寄り駅からの徒歩時間:12分(中庄駅/JR山陽本線)

最寄り空港からの距離:21.4km(岡山桃太郎空港)

1h電車通勤圏内人口:143.5万(倉敷市 浅口市 里庄町 笠岡市 矢掛町 総社市 高梁市 岡山市 瀬戸内市)

30min車通勤圏内人口:127.7万(倉敷市 総社市 早島町 岡山市)

公式戦試合数(2019シーズンまで):62試合 過去5年平均観客動員数:29,293人(5試合)

倉敷市(47.6万)、岡山市(72.1万)という二つの都市から継続的に集客が見込める立地にある球場年一回の阪神戦という条件付きではあるが、ここ5年間のプロ野球公式戦での平均観客動員数が29,293人と地方球場の中ではずば抜けている。本塁打がやや出にくいことや、ファウルゾーンが広すぎるなどパークファクター的な改善点は見受けられるが、それ以外はアクセス面なども良好である。王会長が言うように新チームを作ることを検討するなら、アクセス面と動員実績の両方からまず最初に候補に挙げるべき球場になってきている。

 

3. 終わりに

 今回は九州・四国・中国地方編ということで、ここまでになります。次回が近畿・中部地方編、次々回が関東・東北・北海道地方編になると思います。それではまた。

 

4. 参考サイト

NPB.jp 日本野球機構

YAKYUJO.com: 古今東西の野球場について

乗換案内、時刻表 - Yahoo!路線情報

MapFan - 地図・ルート検索

白地図 テクノコ,NIPPON outline maps

プロ野球Freak