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"リリーフ成功率"で救援投手を評価する -救援投手の特性を顕す評価方法のまとめ-

  お久しぶりです。2月から今年もプロ野球のキャンプが始まっていますね。無観客のキャンプですが、今はSNSやYoutubeなどでキャンプの映像に簡単にアクセスできる上、ファン同士で雑談することもできるので良い時代になりましたね。とはいえ、現地の飲食店や観光地はかなり苦しいと思うので、来年のこの時期には新型コロナウイルスがある程度収束し、気軽に旅行に行ける状態になっていてほしいです。

 今回は、救援投手についての記事です。抑え投手の「劇場度」、「絶望度」については以前にまとめました。

baseball-datajumble.hatenablog.com

  この記事でセーブ成功率の重要性について少し触れたのですが、今回はそこをもう少し掘り下げて救援投手の"リリーフ成功率"を見ていくことで、昨シーズンのNPBの救援投手を評価していきたいと思います。また、投手の"勤続疲労"に関するオリジナル指標についても取り扱います。少し長いですが、どうぞご一読を。

 

1. セーブ成功率の重要性の高さと2020年の各チームのクローザー事情

前置き

 以下のグラフは、シーズン上位下位チームごとに、試合数に対するセーブを記録した試合の割合(Sv/G)を折れ線グラフで、143試合あたりのホールド数(H/143)を棒グラフで示したものです。

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 勝ち試合数に差があるので当然ではありますが、ほとんどのシーズンでセーブ、ホールドともにAクラスのチームがBクラスのチームを上回っており、優秀なリリーフを揃えることの重要性の高さを感じさせられます。また、先発投手のイニングが減りつつあるここ数年は、ホールド数が上位下位問わず増えており、中継ぎ投手の役割が急激に拡大していることが分かります。このように、分業制が加速している現代のプロ野球において優秀な救援投手を確保することは、例年約190日ある長丁場のシーズンを戦い抜く上で必要不可欠になってきています。 

 しかし、優秀な救援投手とはどういう投手のことを言うのでしょうか。ただ単にセーブやホールドが多い投手が良い投手でしょうか。僅差またはリードした展開で仕事を果たした数を示すセーブやホールドポイントは現在のNPBで表彰対象になっている良い指数ですが、私はそれだけでは足りないと感じています。セーブやホールドは単にリリーフに成功した数を表していますが、成功があれば必ず失敗もあり、リリーフ成功率が高い投手が真に良い投手と言えるでしょうそこで私は今回、リリーフ失敗を示す記録を新たに規定し、成功率をもとに投手を評価する新たな指標を作ってみることにしました。抑え投手と中継ぎ投手は少し役割が異なるため、この節では抑え投手について、次節では中継ぎ投手も含めた救援投手全般について順次述べていきます。

メジャーリーグにおけるセーブ成功率とクオリティセーブ(QSv)の定義

 投手の劇場度・絶望度をまとめた一昨年の記事でも書いたように、メジャーリーグでは抑え投手のセーブ失敗を示すブロウンセーブという記録があり、各抑え投手のセーブ成功率(=セーブ/(セーブ+ブロウンセーブ)× 100)を明確に求めることができます。では、このセーブ成功率は何%くらいから十分とみなせるのでしょうか。実例から検討してみましょう。

【MLB】同一球団でシーズン30S以上したクローザーのセーブ成功率と所属チームの勝率(2010-2019)

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  この表は2010年から2019年までのMLBにおいて同一球団で30セーブ以上した抑え投手のセーブ成功率とチーム勝率の関係をまとめたもので、表内の数字は該当150選手のうちの選手数の割合を百分率で表しています。これを見ると、どんなに弱いチームでも30セーブ以上するほどのセーブ機会を与えられる選手は、ほとんどの選手が80%以上のセーブ成功率を維持していることが分かります。勝率5割5分以上の強豪チームではセーブ成功率80%以下の投手はいないことから、ほとんどのケースでは一定のセーブ成功率を維持して多くのセーブをこなすクローザーが重宝されると言っていいでしょう。

 この傾向をもとに、今回新たに私が提案する指標がクオリティセーブ(QSv)です。クオリティセーブは一定の成功率でどれだけセーブをこなしたかを表す指標で、以下のような式で表されます。

 

クオリティセーブ[QSv] = セーブ[Sv] - ブロウンセーブ[BS] × 4

 

 赤星式盗塁のように、セーブ成功率80%を基準として優劣が決まるような式になっています。最近のMLBで見ると、防御率1.32、WHIP0.75と圧倒的な成績でドジャースを29年ぶりのワールドシリーズに導いた2017年のケンリー・ジャンセン投手が37QSv(41S-1BS)を記録している一方、疲労の影響か後半戦は不安定だった2018年レッドソックスのクレイグ・キンブレル投手は22QSv(42S-5BS)となってしまうなど、同じようなセーブ数でも成功率が高い選手ほど評価される指標になっています。

2020年チームQSvランキング

 それでは、昨シーズンのNPBについてチームごとのクオリティセーブのランキングを見ていきましょう・・・とその前に、ここでは厳密に抑え投手の記録のみを抽出するために、セーブとブロウンセーブの条件を少し限定したので説明します。

・現行のセーブの規定ではリードに関係なく3イニング以上を投げて試合を終わらせた投手にもセーブが記録されるが、今回はこのケースは除いたセーブ(cSv:クローザーのセーブの意)を採用
・ブロウンセーブも登板した時点で試合終了まで投げればセーブが付く全ての投手が対象となるため、ブロウンセーブが成立したイニングが9回以降の選手のみブロウンセーブ(cBS)をカウント

 正直言って私のブロウンセーブに対する理解がメジャーリーグのものと完全に合致しているかどうかは自信が無いのですが、今回はこれらの指標を用いて各チームの抑え投手の現状を見ていきます。

2020年チームQSv

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 cSVO%セーブ試合割合cSv%セーブ成功率を示しています。中日や西武、ロッテといった安定した抑え投手がいる3チームが20を超える高いcQSvを記録しており、チームの好成績に大きく貢献していたことが分かります。優勝したソフトバンク、巨人も一定以上のセーブ成功率を維持しており、セ・リーグ2位の阪神も藤川球児投手の2つのブロウンセーブを除けば14cQSvであったことを考えると、良い抑え投手がいるチームが順当に上位進出していると言っていいでしょう。

 それに対し、抑え投手の固定に苦しんだ日本ハムや広島はブロウンセーブがリーグ最下位で、cQSvも伸びていません。また、楽天とDeNAは序盤の抑え投手の不調がそのままシーズンの調子に直結してしまった印象です。オリックスもどちらかと言うと先発向きのディクソン投手に大事なポジションを任せており、良くない状態です。これらのチームが下位を脱出するためには、一年間抑えを任せられる投手のスカウティングや配置転換が肝要です。石山投手が残留したヤクルトは、彼が元気なうちに次世代のクローザー候補を育てておきたいところです。

各チームの抑え投手の点差別成績

 普段野球を見ていて、点差に余裕があるときはランナーを多く出し、1点差の場面ではきっちり抑えるという抑え投手が多いと感じることはありませんか?個人的にも気になったので、この節の最後に、抑え投手の性格が顕れる点差別成績を見ていきます。

※ERAは防御率、sLOB%は残塁率(上記記事参照)

2020年セ・リーグクローザー点差別成績

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  セ・リーグでは、中日・R. マルティネス投手の成績が抜けています。1点差で防御率0.00、セーブ成功率100%というのは素晴らしいですね。全体としては、私の印象とは逆に、点差が広がるほど成績が良くなっています。とはいえ、1点差での成績に藤川球児投手やDeNA・山﨑康晃投手ら序盤不調だった投手の成績が含まれていることを考えると、数字ほどは悪くないでしょう。阪神・スアレス投手、DeNA・三嶋投手、広島・フランスア投手などシーズン中盤から抑えに固定された投手は一定以上の成績を残していますし、現在の抑え投手がシーズンを通して役割を全うすれば、ハイレベルなセーブ王争いが見られるのではないでしょうか。巨人も中川投手、デラロサ投手が万全な状態なら好不調の波も抑えられると思うので、今年は怪我無くポストシーズンまで戦い抜いてほしいです。

2020年パ・リーグクローザー点差別成績

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  次はパ・リーグです。Bクラスのチームは1点差の場面のWHIPやセーブ成功率が悪く、抑え投手として1イニングを任せられる選手が固定し切れなかったことが分かります。特に日本ハムは増井投手が抜けてから数年間抑え投手を固定できているとは言えないので、大胆な配置転換も含めて考えておかなければなりません。一方、Aクラスのチームは私の印象と一致しているところがあり、点差が広がるにつれて防御率やWHIPが上がっています。ソフトバンク・森投手やロッテ・益田投手は3点差以上ではなかなかの劇場度をマークしながら、セーブ失敗がありません。セーブ王の西武・増田投手はWHIPに波が少なく流石ですが、通算400登板を超えるこの3投手は抑えとして長く生き抜く投球術を追求した成果がデータに表れていると言えるでしょう。詳しくは調べていませんが、通算407セーブを記録した元中日の岩瀬仁紀氏はこの投球術を極めていたように思いますし、抑え投手を長く続けるための秘訣なのかもしれません

 

2. "リリーフ成功率"で救援投手を評価する

クオリティリリーフ(QR)の定義

 この節では、抑え投手も含めたリリーフ投手全般について"リリーフ成功率"を反映した指標を定義し、救援投手を評価したいと思います。"リリーフ成功率"を求めるためには、リリーフ失敗を示すブロウンリリーフ(BR)を新たに定義しなければなりませんが、その前にまずホールドやセーブがどういう状況で記録されるかを復習しておきましょう。
 セーブの条件は以前の記事(少し分かりにくい部分があったため、最近になって加筆修正しています)にまとめた通りですが、ホールドの条件も被っているところが多いので、今回はこの2つの記録が付く条件を一括してまとめてみました。日本語版のWikipediaMLB.comのホールドの記事や実際のスコアから推察できるホールドあるいはセーブのどちらかが記録される条件を簡潔にまとめると、以下のように表せます。

・救援投手である
・責任投手ではない
・降板後、自分が残したランナーの生還によって自チームが同点あるいは逆転されていない
A. リードした状況で登板し、以下のいずれかの条件を満たしリードを保ったまま降板するか、最後のアウトを取って試合を終わらせる
 1. 3点以内のリードかつ無走者の場面で登板し、1イニング以上投げる
 2. 次の2打者に連続でホームランを打たれた場合に同点または逆転となる状況で登板し、1/3イニング以上投げる
 3. 点差に関係なく3イニング以上投げる
B. 同点の状況で登板し、以下のいずれかの条件を満たして降板する
 1. 同点のまま失点を許さずに1/3イニング以上投げる
 2. 登板中に自チームが勝ち越した場合、リードを保って降板する

 箇条書きの項目とAまたはBの条件を満たす場合にホールドかセーブが記録されます。リードした状況で登板するAの条件がホールドとセーブで重複しており、セーブが記録されるか否かは最後のアウトを取ることによって区別されているにすぎません。
 そして注意すべきなのが、同点でホールドが記録されるというBの条件は2005年から新規定を定め公式記録としているNPB独自のもので、メジャーリーグでは規定されていないことです。つまり、MLBの中継ぎ投手はリード時にセーブが付く状況で登板しないとホールドの権利すら与えられないということです。同点の展開をどう勝ち試合に持ち込むかが野球の醍醐味の一つだと思うので、この点に関しては2005年のNPBの新規定は素晴らしいですし、日本で中継ぎ投手が評価されやすい主要因と言えるでしょう。
 以上を踏まえて、ホールドやセーブを逃したことを示すブロウンリリーフ(BR)の条件を規定すると、このようになります

味方の最初の攻撃イニングが終わっており、なおかつホールドあるいはセーブが付く(条件A,Bを満たす)場面で登板する
自身の登板中に同点または逆転となるランナーの生還を許す

 "味方の最初の攻撃イニングが終わっており~"という条件は、危険球や引退試合などで1回から登板せざるを得ない投手がおり、そういう投手はほぼ先発とみなせるため加えています。このブロウンリリーフが分かれば、以下のようなリリーフ成功率(R%)を求めることができます。

 

リリーフ成功率[R%] = (ホールドポイント[HP] + セーブ[Sv] - 盗勝)/(ホールドポイント[HP] + セーブ[Sv] - 盗勝 + ブロウンリリーフ[BR])
※ホールドポイントはホールドと救援勝利数の合計

 

 ここで盗勝とは、他に勝ち権利投手がいる状態で登板し、ブロウンリリーフが付いた(リリーフ失敗した)にも関わらず、救援勝利が付いている投手に付く記録になります。他人から"盗"んだ"勝"利ということであまり良い名前ではないですが、ホールドポイントとブロウンリリーフの重複を避けるために設けました。
 そして、このリリーフ成功率をもとに前節のクオリティセーブに似た指標として作ったのがクオリティリリーフ(QR)です。

 

クオリティリリーフ[QR] = ホールドポイント[HP] + セーブ[Sv] - 盗勝 - ブロウンリリーフ[BR] × 4

 

 クオリティセーブと同様に、80%を損益分岐点とした指標になっています。
 今回は、2020年のシーズンについて私がカウントしたブロウンリリーフをもとに、リリーフ成功率とクオリティリリーフを見ていくことで救援投手を評価していきます。

2020年セ・パ個人QRランキング

2020年セ・リーグQR(10リリーフ機会以上)

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 順位リリーフ機会(HP+Sv-盗勝-BR)が10以上を規定とした場合のQRの順位rERArWHIP救援投手としての防御率、WHIPをそれぞれ示しています。セ・リーグは、規定以上で両リーグで唯一リリーフ失敗が無かった中日のR. マルティネス投手がQRトップに。沢村賞のエース・大野雄大投手の活躍も大きいですが、やはりR. マルティネス投手が抑えに落ち着いたことで懸念事項が一つ減ったことがチームの躍進を大きく後押ししたように思います。また、QR2位も中日の祖父江大輔投手。最優秀中継ぎを取った3人の中でも抜群のリリーフ成功率をマークし、念願の大幅年俸アップを勝ち取っています。続く阪神・スアレス投手とDeNA・三嶋一輝投手はともにシーズン途中から抑え投手に抜擢されるという難しい役どころでしたが、見事キャリアハイの成績でブルペンを支えてくれました。巨人では途中加入で大車輪の活躍を見せてくれた高梨雄平投手がトップと印象通りの数字になっています。一方で、ヤクルトの清水昇投手やマクガフ投手、広島の塹江敦哉投手など防御率が良い方ではない選手はブロウンリリーフも多く、QRはマイナスの値になっています。また、阪神の岩崎優投手は防御率もWHIPも優秀なのですが、失点した試合がことごとくブロウンリリーフになっており、意外にもマイナスでした。

2020年パ・リーグQR(10リリーフ機会以上)

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 次はパ・リーグです。一位は120試合ながら例年と遜色ない水準の40HPをマークし最優秀中継ぎに輝いたソフトバンク・モイネロ投手。被打率.164、奪三振率14.44と歴代で見ても上位の成績を残していますし、例年通りの試合数ならシーズンホールド記録も狙えたのではないでしょうか。QR3位の森唯斗投手と組む8,9回は高い水準で安定していますし、ここが崩れない限りソフトバンクの上位は今後も固いでしょう。一方、西武の8,9回を担った増田達至投手、平良海馬投手もQR2位、3位とソフトバンクの方程式に匹敵する数字をマーク。森脇亮介投手のQRも高いですし、増田選手が残留したことで今年も見られる救援陣の活躍が楽しみです。そして、13年連続50登板を達成した日本ハム・宮西尚生投手もQR20超え。ベテランの域に入ったここ数年になって以降、イニングも増やしながらも以前と同水準の数字を残し続けていますし、まだまだ記録は伸びそうです。また、楽天・寺岡寛治投手のように少ない登板数でもホールドポイントと成功率が良い選手が上位にランクインしているのはQRの特徴がよく出ているところです。その反面、ソフトバンク・泉圭輔投手のように登板数が多く、防御率も良くてもホールドが付かない場面での登板が多い投手は、成功率が低くなりがちで評価されづらいという側面もあります。

2020年チームQRランキング

2020年チームQR

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 個人ランキングにも表れているように、盤石な救援陣を誇るAクラスの4チームが85%以上の成功率と高いQRを記録しています。中でも、防御率とQRの乖離が大きい中日は、各救援選手に適格な役割を与えていたと言えるでしょう。一方で、短縮日程の来季以降への影響を考えてか中継ぎの登板数を制限していたロッテ、救援防御率やWHIPの割にブロウンリリーフが多めだった阪神はやや低い数字に留まっています。登板数の多さは気になりますが、DeNAの救援陣もAクラスのチーム並みに成功率が高く、十分よくやっていると言っていいでしょう。QSvではリーグ最下位だった日本ハムもQRではまずまずの数字になっており、抑え投手さえ固定できればチーム成績の向上が期待できます。そして、救援陣が明確に良くなかったと言えるのがQRがマイナスの4チームです。特に楽天とヤクルトはブロウンリリーフが多いにも関わらず登板数が非常に多くなっており、あまり良い運用をしているとは言えません上位進出のためには一定の安定感を維持できる救援陣を揃えることは必要不可欠なので、起用法など采配面も含めて見直してほしいですね。

 

3. 投手の"勤続疲労"を数値化する

 最後は、投手の"勤続疲労"についてです。投手の貢献度を擬似的に示す指標としてはWARやKDがありますが、投手の肉体的な負担を示す指標はありません特に勝ちパターンの救援投手は、少なくともシーズンの半分の試合数で準備しなければならないにも関わらず、セイバーメトリクス上の貢献度の低さもあってその負担を軽視されがちです。長いイニングを投げる先発投手の方が評価されるのは分かるのですが、無理をさせられて故障してしまうのは救援投手の方が多いと思うので、そういう"勤続疲労"のようなものが分かると便利です。そこで今回は、投球数登板間隔をもとに投手の"勤続疲労"を数値化した「疲弊度」を考えたので、簡単に説明します。

 今回私が考えてみた投手の疲弊度(EXI : EXhaustion Index)は以下の式で表されます。

 

疲弊度(EXI) = 投球数/登板間隔 = 投球数/((日数 - 1)/(登板 - 1)- 1)

 

 日数一軍でのシーズン初登板日から最終登板日までの日数です。登板間隔の中身がややこしい式になっていますが、これで「その投手の登板が平均中○日であったか」を示す式になります。投球数が少なくても、登板間隔が狭ければ疲弊度も大きくなるという式になっています。式だけではイメージしにくいと思うので、昨シーズンの実際のランキングを見てみましょう。

※表右のndはn連投(試合ベースではなく、日数ベース)の回数を表す

2020年セ・リーグ疲弊度

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 セ・リーグを見ると、登板間隔が2日を切っている50登板超えの投手の疲弊度が高い傾向にあることが分かります。特に救援登板数トップのDeNA・E. エスコバー投手、パットン投手のタフさ加減が突出しています。この二人は4シーズンで200登板を超えていますし、ラミレスDeNAの投のMVPと言っても良いでしょう。

2020年パ・リーグ疲弊度

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 パ・リーグでも、50登板前後の投手が2日を切る登板間隔で投げており、400を超える疲弊度を示しています。実績豊富なロッテの益田投手を除けば、上位層は中継ぎ専門の投手が名を連ねており、このあたりの抑え投手よりも前のイニングを投げる投手の見かけ以上の負担の大きさが窺えます。

 どちらのリーグでも、先発で最も投球数が多い投手よりも40、50登板(例年なら50、60登板?)を超える救援投手の方が疲弊度が大きくなっています。多くの救援投手が年俸面で評価されないうちに短命に終わりがちなことを考えると、悪くない指数かもしれません。

疲弊度シーズン記録(800以上、2005年以降)

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 最後に、歴代シーズン記録です。上の表はNPB式のホールドが公式記録となった2005年以降、シーズン70登板を超えた投手の疲弊度ランキング上位の顔ぶれを示しています。約190日の例年の日程で70登板と投球数1200を超えると、700程度の疲弊度になるので、これらの投手はそれを優に超えるペースで登板していたことになります。中でも、90登板の記録を作った阪神の久保田智之投手は投球数も登板間隔も異常な数値になっており、1600を超える驚異の疲弊度をマークしています。久保田選手はその後も数年勝ちパターンとして活躍しましたが、やはり一人の投手に負担が偏りすぎるような投手運用は選手生命を縮めますし、極力避けるべきでしょうノーモア、ネバーアゲイン90登板!

 

4. 終わりに

 以上、救援投手に関する様々な評価方法のまとめでした。ブロウンリリーフのカウントは結構時間がかかるので、来年はやらない可能性が高いですが、既存の指標で見た場合の印象との共通点や相違点を実感していただけたら嬉しいです。"リリーフ成功率"の妥当性については議論があるとは思いますが、救援投手の役割がより重くなるであろう今後は僅差の場面で余計な点を許さないリリーフがより評価されていってほしいです。

 データが溜まったので、今後は2021年版の12球団戦力分析を書いていこうと思います。今回まとめたクオリティリリーフを使った分析も載せていく予定です。昨年よりスタートが遅くなってしまいましたが、なんとか開幕までには終わらせたいと思うので、時間があるときにまた立ち寄ってみてください。それではまた次回。

 

※2021年度版、2022年度版もあります!暇つぶしにどうぞ!

baseball-datajumble.hatenablog.com

www.baseball-jumble.com

 

5. 参考サイト

プロ野球 - スポーツナビ

NPB.jp 日本野球機構

- nf3 - Baseball Data House Phase1.0 2020年度版

FanGraphs Baseball | Baseball Statistics and Analysis